小川 未明
大根とダイヤモンドの話
秋になって穫れた野菜は、みんな上できでありましたが、その中にも、大根は、ことによくできたのであります。
百姓は、骨をおった、かいのあることをいまさらながら喜びました。そして、これだけにできるまでの、過ぎ去った日のことなどを考えずにはいられませんでした。
彼は、ある日、圃に出て、たねをまきました。それが、小さなちょうの翼のような芽を出してから、どんなに手のかかったことでしょう。柔らかな葉に、虫がついたときに、それを取ってやりました。また、暑い日盛りには、楽に暮らしているような人々は、みんな昼寝をしている時分にも、圃に出て肥をかけてやりました。また、ひでりが幾日もつづいて、圃の土が白く乾きましたときに、水をやることを怠りませんでした。
こうした、ようようの骨おりで、大根は、こんなにみごとにできたのであります。百姓は、考えるとうれしくてたまらなかったのであります。そして、自分の子供を見るような目つきをしてながめていました。