小川 未明

翼の破れたからす

西の山のふもとの森の中に、からすが巣を造っていました。そして、毎日、朝はまだ、空の明けきらないうす暗いうちから、みんなのからすは列をなして、東の空を指して高く飛んでゆきました。

その時分、村では、起きた家もあれば、まだ寝ている家もありました。からすは、こうして餌を探しに出るのでした。

一日、町の裏や、圃や、また河の淵や、海浜など、方々で食を求めるのでした。一羽がなにかいいものを見つけましたときは、これをみんなに知らせました。そして、けっして、ひとりでそれをばみんな自分のものにしようとはしませんでした。

みんなは、どこへ飛んでゆくのにも、いっしょでありました。また、ひとりがほかのとびやたかなどにかかって、いじめられるようなときがあれば、そのひとりの友だちを見捨てるようなことは、しませんでした。あくまで、その友だちを助けました。そして、いっしょになって戦うか、また、逃げるかしたのであります。

青空文庫の作品カード