小川 未明

山へ帰りゆく父

父親は、遠い街に住んでいる息子が、どんな暮らしをしているかと思いました。そして、どうか一度いってみたいものだと思っていました。

しかし、年を取ると、なかなか知らぬところへ出かけるのはおっくうなものです。そして、自分の長らく住んでいたところがいちばんいいのであります。

「私は、こんなに年をとったのに、せがれはどんな暮らしをしているか心配でならない。今年こそはいってみよう。」

父親は、遠い旅をして、息子の住んでいる街にやってきました。それは、にぎやかな都会でありました。

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