小川 未明
悪魔
一
道の上が白く乾いて、風が音を立てずに木を揺っていた。家々の前に立っている人は、何か怖しい気持に襲われているように眼をきょときょとしながら、耳を立てて、爪先で音を立てぬように、互に寄り添って、耳から耳へと語り合っていた。
頃は四月であった。暗い曇った日の午後である。杉の木の闇には、羽の白い虫が上下に飛んでいる、ちょうど機を織っているようだ。沈黙の中に、何物かを待ち受けているように四辺が静かだ。
「あなたは黒い男を……。」
小川 未明
一
道の上が白く乾いて、風が音を立てずに木を揺っていた。家々の前に立っている人は、何か怖しい気持に襲われているように眼をきょときょとしながら、耳を立てて、爪先で音を立てぬように、互に寄り添って、耳から耳へと語り合っていた。
頃は四月であった。暗い曇った日の午後である。杉の木の闇には、羽の白い虫が上下に飛んでいる、ちょうど機を織っているようだ。沈黙の中に、何物かを待ち受けているように四辺が静かだ。
「あなたは黒い男を……。」