小川 未明
櫛
町から少し離て家根が処々に見える村だ。空は暗く曇っていた。お島という病婦が織っている機の音が聞える。その家の前に鮮かな紫陽花が咲いていて、小さな低い窓が見える。途の上に、二人の女房が立って話をしている。
「この頃は悪い風邪が流行ますそうですよ。」
「そうだそうですよ、骨の節々が痛むんですって。」
陰気な、力なげな機の音がギイーシャン、コトン! と聞えて来る。全くこの時風が死んだ。また降り出しそうな空には、雲脚が乱れていた。
小川 未明
町から少し離て家根が処々に見える村だ。空は暗く曇っていた。お島という病婦が織っている機の音が聞える。その家の前に鮮かな紫陽花が咲いていて、小さな低い窓が見える。途の上に、二人の女房が立って話をしている。
「この頃は悪い風邪が流行ますそうですよ。」
「そうだそうですよ、骨の節々が痛むんですって。」
陰気な、力なげな機の音がギイーシャン、コトン! と聞えて来る。全くこの時風が死んだ。また降り出しそうな空には、雲脚が乱れていた。