小川 未明
過ぎた春の記憶
一
正一は、かくれんぼうが好きであった。古くなって家を取り払われた、大きな屋敷跡で村の子供等と多勢でよくかくれんぼうをして遊んだ。
晩方になると、虻が、木の繁みに飛んでいるのが見えた。大きな石がいくつも、足許に転がっている。其処で、五六人のものが輪を造って、りゃんけんぽと口々に言って、石と鋏と紙とで、拳をして負けたものが鬼となった。
鬼は、手拭で堅く両眼を閉められて、その石の間に立たされた。而して他のものは、足音を立てずに何処へか隠れてしまった。
小川 未明
一
正一は、かくれんぼうが好きであった。古くなって家を取り払われた、大きな屋敷跡で村の子供等と多勢でよくかくれんぼうをして遊んだ。
晩方になると、虻が、木の繁みに飛んでいるのが見えた。大きな石がいくつも、足許に転がっている。其処で、五六人のものが輪を造って、りゃんけんぽと口々に言って、石と鋏と紙とで、拳をして負けたものが鬼となった。
鬼は、手拭で堅く両眼を閉められて、その石の間に立たされた。而して他のものは、足音を立てずに何処へか隠れてしまった。