小川 未明
薔薇と巫女
一
家の前に柿の木があって、光沢のない白い花が咲いた。裏に一本の柘榴の木があって、不安な紅い花を点した。その頃から母が病気であった。
村には熱病で頭髪の脱けた女の人が歩いている。僧侶の黒い衣を被たような沈鬱な木立がある。墓石を造っている石屋があれば、今年八十歳の高齢だからというので、他に頼まれて盲目縞の財布を朝から晩まで縫っている頭巾を被った老婆が住んでいる。
彼は、多少学問をしたので迷信などに取り付かれなかった。腐れた古沼には頭も尾もない黒い虫が化殖るように迷信の苔がこの村の木々に蒸しても、年の若い彼は頓着しなかった。