室生 犀星

不思議な魚

漁師の子息の李一は、ある秋の日の暮れに町のある都へ書物を買いに出掛けました。李一は作文と数学の本を包んで本屋を出たのは、日の暮れでもまだ明るい内だったのです。

その時、反対の町から魚やの盤台のような板の上に、四角なガラス瓶を置いて、しきりに何か唄いながら行く男を見たのです。その男のあとを町の子供らがぞろぞろ尾いて歩いていました。

「一たい、ガラスの箱の中に何が這入っているのだろう。」

李一は人込みの中から覗いてみると、美しい白魚のような形をした、それでいて、瞳もあり、足や手のある美しい人間のような魚であったので、なお、ふしぎそうに眺め込んでいました。わけても、その眼はきらきらとした美しい黒い色をしているのです。

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