室生 犀星

みずうみ

これは何となく人間の老境にかんじられるものを童話でも小説でも散文でもない姿であらわそうとしたものである。――

一

舟のへさきに白い小鳥が一羽、静かに翼を憩めて止っている。――その影は冴えた百合花のように水の上にあるが、小波もない湖の底まで明るい透きとおった影の尾を曳いている。ときどき扇のような片羽を開いて嘴で羽虫でも※(「求/(餮-殄)」、第4水準2-92-54)るのであろう、ふいに水の上の白い影が冴えて揺れた。

「お母様はどうなすったのでございましょう? あんなにお急ぎになったのに――わたしちょいと見てまいりましょうか。」

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