小川 未明

銀のつえ

あるところに、いつも遊び歩いている男がありました。兄さんや、妹は、いくたび彼に、仕事をはげむようにいったかしれません。けれど、それには耳を傾けず、街のカフェーへいって、外国の酒を飲んだり、紅茶を喫したりして、終日ぼんやりと暮らすことが多かったのでした。

彼は、そこで蓄音機の音楽をきいたり、また、あるときは劇場へオペラを見にいったり、おもしろく暮らしていたのでありました。

ある日のこと、彼は、テーブルの上に、いくつもコップを並べて、いい気持ちに酔ってしまったのです。そして、コップの中にはいった、緑・青・赤、いろいろの酒の色に、ぼんやり見とれていますと、うとうとと居眠りをしたのでした。

もう、いつのまにか、日は、とっぷりと暮れてしまいました。

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