小川 未明
春さきの古物店
広やかな通りには、日の光が暖かそうにあたっていました。この道に面して、両側には、いろいろの店が並んでいました。ちょうどその四つ辻のところに、一軒の古道具をあきなっている店がありました。そこに、各種の道具類が置かれてある有り様は、さながら、みんなは、いままで働いていたけれど、不用になったので、しばらく骨休みをしているというようなようすでありました。
どんなものが、そこにあったかというのに、まず壁ぎわには、張り板が立てかけられてあり、その下のところに、乳母車が置いてあり、その横に机があり、その他、火ばち・針箱・瓶というように、いろいろな道具類が並べられてありました。
しかし、張り板と乳母車と机とが、いちばんたがいに距離が近かったものだから、話もし、また親しくもしていました。彼らは、このごろは仕事もないし、ただ空想にふけったり、昔のことを思い出したりしているよりほかはなかったのであります。
そのなかでも乳母車は、ちょうど腰の曲がったおばあさんのように、愚痴ばかりいっているのでした。