小川 未明

窓の下を通った男

一毎日のように、村の方から、町へ出ていく乞食がありました。女房もなければ、また子供もない、まったくひとりぽっちの、人間のように思われたのであります。

その男は、もういいかげんに年をとっていましたから、働こうとしても働けず、どうにもすることができなかった、果てのことと思われました。

町へいけば、そこにはたくさんの人間が住んでいるから、中には、自分の身の上に同情を寄せてくれる人もあろうと思って、男は、こうして、毎日のように、田舎道を歩いてやってきたのです。

しかし、だれも、その男が思っているように、歩いているのをとどまって、男の身の上話を聞いて、同情を寄せてくれるような人はありませんでした。なぜなら、みんなは自分たちのこと考えているので、頭の中がいっぱいだからでした。まれには、その男のようすを見て、気の毒に思って財布からお金を出して、ほんの志ばかりでもやっていく人がないことはなかったけれど、それすら、日によっては、まったくないこともありました。男は、空腹を抱えながら、町の中をさまよわなければなりませんでした。

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