槙村 浩

ダッタン海峡

春の銀鼠色が朝の黒樺を南からさしのばした腕のように一直線に引っつかんで行く凍った褐色の堀割が、白いドローキの地平を一面に埋める―――ダッタン海峡! ふいに一匹の迷い栗鼠が雪林から海氷の割れ目え転げ落ちるとたん、半分浮絵になった銅チョコレート色の靄の中から、だ、だ、ただーんと大砲を打っ発した

峡瀬をはさんで、一つの流れと海面からふき出した一つの島がある土人は黒龍江を平和の河と呼び、サハリンを平和の岩と呼んだかつて南北の帝国主義の凝岩がいがみ合ったところいま社会主義の熔流が永遠の春を溶かそうとする

見はるかすシベリヤ松とドウリヤ松の平原の釘靴帯粘土の陵堡砦が形造る部落部落のコルホーズ孤立したパルチザンの沼沢をめぐる麦と煉瓦と木材の工場群おゝ、サヴェスチカヤ湾………おゝコモールスカヤ市………おゝバム鉄道………その名を聞くたびに身内をめぐる新鮮な身震いを感じウスリの少女らが頭に巻くハネガヤの花のような芳醇さを疲れた胸に吹き込むそれらの名前は数万の、ロシヤと中国とウクライナと白ロシヤと高麗と日本の定住した民族の生活圏を、美くしく合成する第二次五ヶ年計画の完成を貫いているんだ!おゝ希望の湾………おゝ青年の市………おゝ、北東の頭蓋を覆う××(1)鉄道………

凍原の砂漠と黒土の流れをつなぐ鉄柱の列はいま偉大なゲンプランの軋りもて平和の岩に伸びようとするまた青年突撃隊の進軍だ………彼等の指導の下に工事は進むだろうそしてかつて罪によって労働者の群から自らを脱落せしめたもの鉄道敷設と海峡埋立をサヴェートは彼等に命じ赤い労働器具は、やがて彼等を愉快な移民とするだろう

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