中谷 宇吉郎

楡の花

私の今つとめている札幌の大学は、楡(エルム)の樹で有名である。

緑の芝生がつやつやと滑らかで、そのところどころに大きい楡の樹が立ち、鮮かな緑の葉が天蓋のように空を蔽っている。夏の陽光に映えたその木蔭から、もとは白壁の校舎が点々と見えた。

全体の様子は、ニューイングランドの或る学校の構内を、そのまま真似たという話である。そしてエルムの学園などという言葉が、戦前まではよく使われたものであった。

内地の若い人たち、特に女学生の人たちの間に、このエルムの樹はなかなか人気があったようである。戦争前までは、夏休みになると、毎日のように、修学旅行の連中が来た。緑の芝生の中に、白いパラソルの列がそろそろ見え始めると、もう夏休みになったという気がしたものである。

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