槙村 浩
長詩
その時僕は牢獄の中に坐ってゐた格子が僕と看守の腰のピストルとの間をへだてゝゐた看守はわざ/\低くつくりつけた窓からのぞきこむために朝々うやうやしく僕にお辞儀し僕は まだ脱獄してゐない証拠としてちびつけのブハーリンのような不精髯の間から朝々はったと看守をにらみつけたこれが僕らの挨拶だった朝になると、窓が右からかげって来た夜になると、窓が左からかげって来たそのたびにアスファルトのどす黒い影がぐるりと鉄格子をまわって二つの世界を僕の前にくっきりくりひろげた
僕はこう感じた鉄格子の間には、××と卑屈と道化芝居の動物園がある―――誰が敢てそれを自由と呼ぶか!そこでは空気と太陽のかけらさえ淫売婦のように購入を強ひられる犬、猫かぶり、猿まね、下手くそなおーむども何とゆうちっぽけでみじめな宇宙だ!そして僭越にも 誰が敢て僕らを檻の中と呼ぶか!このそとの、××と卑屈と、道化芝居の動物園の僕らは果敢な園長ではないか――しかも僕らの中に死活の鍵を握った!おゝ、何とゆうこゝは自由なそしてほゝえましい世界だらう!
そして ある日僕は板じきの上にのんきなアルマジロのように寝転んで手あたり次第に本のページをくってゐたそれは皮肉にも、このむかっぱらになってはいじけむかっぱらになってはいじけする狭い島国の詩人たちが順々に古典的博物館からくりひろげてみる詩と詩に関する叙述に属してゐた僕はその中から 二つの名前をひろいだした――バイロン!かつてこんなしかめっつらを守りつゞけるために、民衆におあいそをふりまいたイギリス人があった……――ハイネー!かつてこんな利己的であるために、民衆を愛したドイツ人があった……そして帝