小川 未明

『小さな草と太陽』序

詩や、空想や、幻想を、冷笑する人々は、自分等の精神が、物質的文明に中毒したことに気付かない人達です。人間は、一度は光輝な世界を有していたことがあったのを憫れむべくも自ら知らない不明な輩です。

芸術は、ほんとうに現実に立脚するものです。童話は、芸術中の芸術であります。虚無の自然と生死する人生とを関連する不思議な鍵です。芸術の中でも、童話は小説などと異って、直ちに、現実の生命に飛び込む魔術を有しています。

童話は、全く、純真創造の世界であります。本能も、理性も、この世界にあっては、最も自由に、完美に発達をなし遂げることが出来るのであります。何者の権力を以てしても、この自由を束縛することができない。

私は、童話の世界を考えた時に、汚濁の世界を忘れます。童話の創作熱に魂の燃えた時に、はじめて、私の眼は、無窮に、澄んで青い空の色を瞳に映して、恍惚たることを得るのであります。

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