知里 真志保

図書館通い

私が当時の室蘭中学校に入学したのは関東大震災の年、つまり大正12年のこと。登別の小学校から、室中1年1組の副級長として、中学生活の第一歩を踏み出した私は、現在振りかえってみてもあまり楽しい思い出をもたない。

まだ人種的偏見のかなり激しかったころとて、国語や歴史などのように授業中アイヌという言葉を聞かなければならなかった学課は、そういう意味でどうも苦手だった。ただ1年のときの担任で板垣という柔道、体操を教えていた先生をはじめ、私を温くみまもってくれた先生や、二、三の友人には感謝したい。

自分では“悪にたいする意志が強い”と思っていたが、この人たちがいなかったら現在の私はもっと変った道を歩いていたかも知れなかろう。精神分析学の原理にもあるとおり、自分に都合の悪いことはとかく忘れてしまうものだが、記憶にのこっている私の中学時代は非常に欠席が多かったということである。これは教室で受ける白眼視にたえられなかったからで、決して学業を怠けようと思ったからではない。かといってあまり自慢にもならないことはもちろんである。

欠席がちでしかも小遣い銭も乏しかった私の足は自然図書館に向って、坪内逍遙訳のシエクスピア全集を読破したり、厨川白村の近代文学十二講や本間久雄の著書などに読みふけった。

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