知里 真志保

アイヌ語のおもしろさ

アイヌ語やアイヌ文学を扱っていると、われわれの予想もしなかったような考え方にぶつかって戸惑いするのは毎度のことである。

例えば氷をアイヌ語では「ル※(半濁点付き小書き片仮名フ、1-6-88)」(ru-p)と言う。「とける・もの」ということである。日本語の「コオリ」という語は「氷るもの」という意味であったと思われるから、さし示す対象は同じでも、ことばの裏の考え方には根本的なくいちがいがある。

アイヌ語に、「エネア・レカ・イ カ イサム」(ene a-reka-ika isam)という表現がある。直訳すれば、「どう われら・褒め・よう も ない」ということで、「褒めようもない」から「くさす」という意味にもなりかねない。しかしこのアイヌ語の真意は、「それ以上ほめようとしても、ほめるキッカケがない」ということで、完全無欠を意味する慣用句なのである。

また「ミナ・コヤイクス」(mina-koyaykus)という表現がある。直訳すれば「笑うことが・できない」ということである。「笑うことができない」ならば、「笑わないでムッツリとしている」のかと思えば、事実は「腹を抱えて笑う」ことである。「これ以上笑いたくても笑えない」というのが、このアイヌ語の真意である。

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