葉山 嘉樹

万福追想

渓流は胡桃の実や栗の実などを、出水の流れにつれて持つて来た。水の引きが早いので、それを岩の間や流木の根に残して行く。

工事場の子供たちは、薪木にする為に、晒されて骨のやうになつた流木や、自分たちのお八つにする為に、胡桃や栗の実を拾ひ集めるのだつた。

胡桃の実も栗も、黒くなつてゐて、石の間や流木の間に挾まつてゐると、なか/\見つけるのに骨が折れたが、子供たちは大人よりも上手に見つけて、懐に入れたり、ポケットに入れたりして、それを膨らませてゐた。

小さな渓流で、それにかかつてゐる橋は、長さ三間位もあつただらうか。出水の時は、恐ろしく大きな音をたてて、玉石などを本流に転がし込むのだつたが、ふだんは子供たちのいい遊び場であつた。

青空文庫の作品カード