桜間 中庸
城山のことなど
城山は冬がいゝ。
あの峰の城趾の熊笹原の中に立つて、笹の葉裏を白くかへし、老松の幹をゆるがせて音高く吹き過ぎてゆく風の聲を聞くのはたまらなくいゝものだ。冷たい、身を切るやうな風だ。どこからともなく、どこへともなくの感を眞實、風に感じるのはこの時だ。
私は少年時代、よく獨りであの城趾のあちこちをやたらに走り廻つた。
崩れかけた石垣を逼ひ登つて、石垣の上に立ち、兩腕を高くさしのべて、たゞわけもなく涙することもあつた。
桜間 中庸
城山は冬がいゝ。
あの峰の城趾の熊笹原の中に立つて、笹の葉裏を白くかへし、老松の幹をゆるがせて音高く吹き過ぎてゆく風の聲を聞くのはたまらなくいゝものだ。冷たい、身を切るやうな風だ。どこからともなく、どこへともなくの感を眞實、風に感じるのはこの時だ。
私は少年時代、よく獨りであの城趾のあちこちをやたらに走り廻つた。
崩れかけた石垣を逼ひ登つて、石垣の上に立ち、兩腕を高くさしのべて、たゞわけもなく涙することもあつた。