桜間 中庸
逗子
濱に出て砂にころべは夕さりて町に歸ればしみじみと、思ひ出ぬるふるさとのこと。
夕燒がまつ赤だ 故郷の臺山の夕やけを思ひ出す。いつもは見えない富士の頂の鋸齒が一つ一つくつきりとまつかな空と眞白な頂との境を見せて何とも云へない莊巖さだ。おゝ富士・富士・富士・刻々に消えて行く空のまつ赤な光りは又何といふ淋しさだ、臨終を見つめる心にも似て。
飴色に輝いて寄せつ返しつしてゐた波が何時の間にか灰色にかわつてゐる。水族館の灯が波に冷たくゆらいでゐる。
葉山街道にうす紫色のもやが低く逗つてゐて半島の突端は――岩壁にぶつつかつてゐる波のかけらがかすかに見える。