松本 淳三

再生の日の海を眺めて

俺は再び海を見るのだ!ひろいひろい海を見るのだ!それは、絵より詩より もっと大きい、もっと美しい動いている海、輝いている海!ああはっきりと映って来る海!

俺は岩に腰をおろしたやせた両手を胸に抱いた「貴方の御出をどんなに待ったか知れません、 よくも貴方は、生きて再び私の姿を見て呉れます……」海は大きい胸をたたいてまず何よりもにっこりしたそして 鮮な潮の香りをたえず――俺の体に送った泣きたい 笑いたい 手をふりたい!また身をぞんぶんに揺すりあげたい!――この心俺はこうした自由な体にそして、ああ幾年ぶりにこの壮麗な海を見るのだ!暗い地下室、つめたい板敷(ここに来るものはすべての希望を後に見捨てる!)あの恐ろしい牢舎の裡からよくも俺だけは生きて出て来た!

あれ、真白いランチが走って来る赤い三角帆のヨット、その上を散らばる鴎の群の軽快さ波止場に並んで じっと動かぬ赤い帆船のバウスプリットと 頑丈そうな錨、また錨でな彼方――みどりに輝く遠い岬の だんだん畠と木立、白雲青い マッチ箱のような望楼そこに――かすかにかすかにひらめく旗!

俺は静かに眼をつむったあとからあとから熱い涙が流れてやまないああ……昔から幾百人もの所謂先駆者と称ばれた男があそこであのまま(丁度俺たちが居たように……)くらい洞穴の底深くとじられそして最後が(二行抹消)

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