百田 宗治
騒擾の上に
(見えない一人の指揮者が彼等の上を飛び越え、狂奔し、埃と騒擾と錯乱の上を飛躍する、一物も纏わない裸身、その肩をかざる鮮かな二つの翼、剣の鞘は開かれ彼は先頭に立って走る……)
叫喚と怒号、暗黒の大津波があらゆる細微物から、広汎な大運動を通じていま、一切の群集を煽り、先立たせ、狂奔せしめる、肩から肩、手から手、心魂から心魂へ、見えざる旋風が一切の熱狂を高く捲き上げる……。
反乱と蜂起と同盟罷工の群集、一つが他を誘う雲霞のような進出、あらゆる雲々、大建築、橋、道路、停車場、一切の広場と十字街が宮殿が、彼等によって支持され動かされ、運ばれ、遥か彼方、未知の世紀の方に向って移動させられて行くように見える。
(その眼は怒りと狂激に燃え、全身は一つの赤熱した鉄塊のようである、怒号し、うち呼ばわり、見えざるその手を以てあらゆる群集を指揮し、煽動し、大風のはためきを以て空中を飛躍する……)