森 竹夫
保護職工
働いているこの機械は家庭用シンガーミシン台ではない旧式な製本の安機械彼女は磨き歯車に油を注す埃をうかべた日光が漸くさぐりあてるくらがりでだまりやさんだまりやさんだけどわたしはお前がじっと何をこらえているのか知ってるの
十六歳未満だから保護職工何てかがやかしい名だ美しい名だ残業はたっぷり四時間活動小屋のはねる頃になって半分眠ったこの保護職工は縄のようなからだで露路から電車道にたどりつく
ガスのたまった神田の工場街では雀もあそばない十一月に入って冷たい雨がふり出した通りがかりに見ると彼女は今日も見えぬじっと光をこらした機械の上におどろくべき鮮明さで保護職工の指紋がついていた(一九二九年十二月学校詩集発行所刊『学校詩集』に発表)