小川 未明

ねずみとバケツの話

町裏を小さな川が流れていました。川というよりは、溝といったほうがあたっているかもしれません。家々で流した水が集まって、一筋の流れをなしているのでありました。

ねずみは、その流れの岸に穴を掘って、もう長い間、そのところにすんでいました。ほかのねずみたちが、みんな家々の天じょう裏や、縁の下などに巣を造っているのに、このねずみばかりは、こうして、外のこんなむさくるしいところに、どうしてすんでいるのだろうという疑いをもたれたのですが、それには子細のあることでした。

この川の淵には、いたるところにごみためがあって、いろいろなものが捨てられるからではありませんでした。ねずみの食べられそうなものは、犬やからすが先にきて、たいていそれを食べてしまうのでありましょう。

ねずみがここにすんだのは、この場所が安全だと思ったのにほかなりませんでした。

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