小川 未明
小さな金色の翼
彼らの群れから離れて、一羽の小鳥が空を飛んでいますと、いつしか、ひどい風になってきました。そして、小鳥は、いくら努力をしましても、その風のために吹き飛ばされてしまいました。
空には、雲が乱れていました。方角もわからなくなってしまいました。小鳥は、ただ飛んでゆきさえすれば、そのうちに林が見えるだろう。また、山か、野原に出られるだろうと思っていました。
日はだんだん暮れかかってきました。そして、雨さえ風にまじって降り出しました。小鳥は、ただ一思いに、ゆけるところまで飛ぼうと思ったのでありましたが、いまは疲れて、どこかに降りて、すこしの間休まなければならなかったのであります。小鳥は、高い空から舞い下りようとして、びっくりしました。なぜなら、真下には、ものすごい、大海原があったからです。いままで、雲にさえぎられて、自分はどこを飛んでいるのか見当すらもつかなかったのですけれど、この有り様を見て、小さな鳥の心臓は恐ろしさのために冷たくなってしまいました。
どうしたらいいか、小鳥にはわからなかったのです。もはや、疲れた翼を休めることもできません。このうえは、力のつづくかぎり、この海を飛びきって、あちらに陸地を見いだすよりしかたがなかったのです。それで、小鳥は風と戦い、雨と戦って、飛んで、飛んで、飛びました。そのうちに、日は暮れてしまって、まったく、あたりは真っ暗になってしまったのでした。