大倉 燁子
梟の眼
ポケットのダイヤ
陽子は珍らしく早起きして、朝のお化粧もすませ、ヴェランダの籐椅子にながながと両足を延ばし、ココアを飲みながら、頻りに腕時計を眺めていた。
客間の置時計が九時を打つと、それを合図のように玄関のベルが鳴って、貴金属商の杉村が来た、と書生が取りついだ。貴金属商というのは表面で、実は秘密に婦人達の間を廻り歩いている、損料貸しなのである。指輪や時計の交換などもやるので、重宝がられているのだった。彼は如才ない調子で、お世辞を振りまきながら、女中が茶菓を運ぶのに出たり入ったりしている間は、ゆっくりと鞄から一つ一つ指輪を取り出して、テーブルの上に並べていたが、女中の姿が見えなくなると、懐中から別に持っていたのを出して、
「パリーで買ったものだというんですが――、カットも新しいし、これだけの上物は滅多にございません。――いかがでしょう? 二千五百円じゃお安いと思いますが――」