大倉 燁子
深夜の客
声
女流探偵桜井洋子のところへ、沼津の別荘に病気静養中の富豪有松武雄から、至急報の電話がかかり、御依頼したい件が出来た、至急にお出でを願いたい、と云ってきた。
有松は如才ない男だ。殊に婦人に対しては慇懃で物優しく、まことに立派な紳士であるが、どういうものか洋子は彼を好まなかったので、ちょっと行き渋ったが、職業柄理由なく断わるのもよくないと思い、午後四時四十分発の急行で、東京駅を立ったのだった。
汽車が小田原に着く頃には、ひあしの短い冬の日は、もうとっぷり暮れていた。
大倉 燁子
声
女流探偵桜井洋子のところへ、沼津の別荘に病気静養中の富豪有松武雄から、至急報の電話がかかり、御依頼したい件が出来た、至急にお出でを願いたい、と云ってきた。
有松は如才ない男だ。殊に婦人に対しては慇懃で物優しく、まことに立派な紳士であるが、どういうものか洋子は彼を好まなかったので、ちょっと行き渋ったが、職業柄理由なく断わるのもよくないと思い、午後四時四十分発の急行で、東京駅を立ったのだった。
汽車が小田原に着く頃には、ひあしの短い冬の日は、もうとっぷり暮れていた。