野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「八、近頃お前は、大層な男になつたんだつてね」
錢形平次は、珍らしく此方から水を向けました。ガラツ八の八五郎が縁側へ腹ん這ひになつて、手長猿のやうに遠方の煙草盆を引寄せ、默つてお先煙草を二三服立て續けに吸つたところへ冠せた話のきつかけです。
「それほどでもありませんがね。――尤も人を助けるといふのは、まことに、良い心持のもので」
野村 胡堂
一
「八、近頃お前は、大層な男になつたんだつてね」
錢形平次は、珍らしく此方から水を向けました。ガラツ八の八五郎が縁側へ腹ん這ひになつて、手長猿のやうに遠方の煙草盆を引寄せ、默つてお先煙草を二三服立て續けに吸つたところへ冠せた話のきつかけです。
「それほどでもありませんがね。――尤も人を助けるといふのは、まことに、良い心持のもので」