野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、良い陽氣ですね」

ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、枝折戸を足で開けて、ノツソリと日南に立ちはだかるのでした。

「陽氣の良いのはオレのせゐぢやないよ、頼むから少し退いてくれ。草花の芽が一パイに天道樣に温ためられてゐるんだ」

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