野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

二月のある日、歩いてゐると斯う、額口の汗ばむやうな晝下がり、巣鴨からの野暮用の歸り、白山あたりへ辿りついた頃は、連の八五郎はもう、何んとなく御機嫌が斜めになつて居りました。

「大層元氣が無いやうだな、八」

平次は足を淀ませて、八五郎の長い顎を振り返りました。

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