野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分、この頃妙なものが流行るさうですね」
八五郎がそんな話を持込んで來たのは、三月半ばの、丁度花もおしまひになりかけた頃、浮かれ氣分の江戸の町人達も、どうやら落着きを取戻して、仕事と商賣に精を出さうと言つた、殊勝な心掛になりかけた時分でした。
「流行物と言へば、大道博奕に舟比丘尼、お前の頭のやうに髷節を無闇に右に曲げるのだつて流行物の一つらしいが、どうせろくなものは無いな」
野村 胡堂
一
「親分、この頃妙なものが流行るさうですね」
八五郎がそんな話を持込んで來たのは、三月半ばの、丁度花もおしまひになりかけた頃、浮かれ氣分の江戸の町人達も、どうやら落着きを取戻して、仕事と商賣に精を出さうと言つた、殊勝な心掛になりかけた時分でした。
「流行物と言へば、大道博奕に舟比丘尼、お前の頭のやうに髷節を無闇に右に曲げるのだつて流行物の一つらしいが、どうせろくなものは無いな」