野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「世の中に、金持ほど馬鹿なものはありませんね」

「貧乏人は皆んな、そんな事を言ふよ、つまらねえ持句さ」

平次と八五郎は、相變らず空茶に馬糞煙草で、いつものやうな掛け合ひを始めて居ります。薄ら寒い二月の、ある朝の一と刻、八五郎の人生觀が、この不思議な事件へ錢形平次を追ひやる動機でした。

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