野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「八、その十手を見せびらかすのを止してくれないか」

「へエ、斯うやりや宜いんでせう。人に見せないやうに」

親分の平次に言はれて、ガラツ八の八五郎はあわてゝ後ろ腰に差した十手を引つこ拔くと、少々衣紋の崩れた旅疲れの懷中にねぢ込むのです。

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