野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分の前だが、あつしも今度ばかりは、二本差が羨ましくなりましたよ」
ガラツ八の八五郎は、感にたへた聲を出すのでした。カラリと晴れた盆過ぎの或る日、平次は盛りを過ぎた朝顏の鉢の世話を燒き乍ら、それを手傳はうともせずに、縁側から無駄を言ふ、八五郎の相手をして居ります。
「おや、妙なことを言ふぢやないか、お前は武家と田螺和は大の嫌ひぢやなかつたのか」
野村 胡堂
一
「親分の前だが、あつしも今度ばかりは、二本差が羨ましくなりましたよ」
ガラツ八の八五郎は、感にたへた聲を出すのでした。カラリと晴れた盆過ぎの或る日、平次は盛りを過ぎた朝顏の鉢の世話を燒き乍ら、それを手傳はうともせずに、縁側から無駄を言ふ、八五郎の相手をして居ります。
「おや、妙なことを言ふぢやないか、お前は武家と田螺和は大の嫌ひぢやなかつたのか」