野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「八、居るかい」
向う柳原、七曲の路地の奧、洗ひ張り、御仕立物と、紙に書いて張つた戸袋の下に立つて、平次は二階に聲を掛けました。よく晴れた早春のある朝、何處かで、寢呆けた雄鷄が時をつくつて居ります。
「誰だえ、人を呼捨てにしやがつて、戸袋の蔭から出て、ツラを見せろ」
野村 胡堂
一
「八、居るかい」
向う柳原、七曲の路地の奧、洗ひ張り、御仕立物と、紙に書いて張つた戸袋の下に立つて、平次は二階に聲を掛けました。よく晴れた早春のある朝、何處かで、寢呆けた雄鷄が時をつくつて居ります。
「誰だえ、人を呼捨てにしやがつて、戸袋の蔭から出て、ツラを見せろ」