野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、向島は見頃ださうですね」

ガラツ八の八五郎は、縁側からニジり上がりました。庭一杯の春の陽ざし、平次の軒にもこの頃は鶯が來て鳴くのです。

「さうだつてね、握り拳の花見なんかは腹を立てゝ歸るだけだから、お前に誘はれても附き合はねえつもりだが――」

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