野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分」
「何だ八、又大變の賣物でもあるのかい、鼻の孔が膨らんでゐるやうだが」
錢形の平次は何時でもこんな調子でした。寢そべつたまゝ煙草盆を引寄せて、こればかりは分不相應に贅澤な水府煙草を一服、紫の煙がゆら/\と這つて行く縁側のあたりに、八五郎の大きな鼻が膨らんでゐると言つた、天下泰平な夏の日の晝下りです。
野村 胡堂
一
「親分」
「何だ八、又大變の賣物でもあるのかい、鼻の孔が膨らんでゐるやうだが」
錢形の平次は何時でもこんな調子でした。寢そべつたまゝ煙草盆を引寄せて、こればかりは分不相應に贅澤な水府煙草を一服、紫の煙がゆら/\と這つて行く縁側のあたりに、八五郎の大きな鼻が膨らんでゐると言つた、天下泰平な夏の日の晝下りです。