野村 胡堂

銭形平次捕物控

附け文ごつこ一

「あら、八五郎親分」

神田お臺所町、これから親分の錢形平次の家へ朝詣りに行かうといふところで、八五郎は馥郁たる年増に抱きつかれてしまひました。

櫻の蕾もふくらみさうな美しい朝、鼻の穴を大きくして、彌造を二つ、七三に拵へて、間伸びのした小唄なんかをひよぐりながら、親分の錢形平次の家へ、その日の新聞種を持つて行くのが、長い間の八五郎の慣はしだつたのです。

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