野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、變なことがありますよ」

八五郎のガラツ八が、長んがい顏を糸瓜棚の下から覗かせた時、錢形の平次は縁側の柱にもたれて、粉煙草をせゝり乍ら、赤蜻蛉の行方を眺めて居りました。この上もなくのんびりした秋のある日の夕刻です。

「びつくりさせるぢやないか、俺は糸瓜が物を言つたのかと思つたよ」

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