野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「さあ大變だ、親分」
ガラツ八の八五郎は、髷先で春風を掻きわけるやうにすつ飛んで來ました。よく晴れた二月のある朝、何處からともなく聞える小鳥の囀りや、ほんのりと漂ふ梅の花の匂ひをなつかしむともなく、江戸開府以來と言はれた捕物の名人錢形の平次は、縁側に立つて斯うぼんやり眺めてゐたのです。
「相變らず騷々しい奴ぢやないか、何が一體大變なんだ」
野村 胡堂
一
「さあ大變だ、親分」
ガラツ八の八五郎は、髷先で春風を掻きわけるやうにすつ飛んで來ました。よく晴れた二月のある朝、何處からともなく聞える小鳥の囀りや、ほんのりと漂ふ梅の花の匂ひをなつかしむともなく、江戸開府以來と言はれた捕物の名人錢形の平次は、縁側に立つて斯うぼんやり眺めてゐたのです。
「相變らず騷々しい奴ぢやないか、何が一體大變なんだ」