野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
柳原の土手下、丁度御郡代屋敷前の滅法淋しい處に生首が一つ轉がつて居りました。
朝市へ行く八百屋さんが見つけて大騷ぎになり、係り合ひの町役人や、彌次馬まで加はつて搜した揚句、間もなく首のない死骸が水際の藪の中から見つかり、それが見知り人があつて、豊島町一丁目で公儀御用の紙問屋越前屋の大番頭清六と判つたのは、大分陽が高くなつてからでした。
ガラツ八の八五郎の大袈裟な注進で、錢形平次が來たのはまだ檢屍前。
野村 胡堂
一
柳原の土手下、丁度御郡代屋敷前の滅法淋しい處に生首が一つ轉がつて居りました。
朝市へ行く八百屋さんが見つけて大騷ぎになり、係り合ひの町役人や、彌次馬まで加はつて搜した揚句、間もなく首のない死骸が水際の藪の中から見つかり、それが見知り人があつて、豊島町一丁目で公儀御用の紙問屋越前屋の大番頭清六と判つたのは、大分陽が高くなつてからでした。
ガラツ八の八五郎の大袈裟な注進で、錢形平次が來たのはまだ檢屍前。