野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「わツ驚いた、ドブ板が陷穴になつて居るぜ。踏み返したとたんに赤犬が噛み付きさうに吠える仕掛は念入り過ぎやしませんか、親分」
ガラツ八の八五郎は危ふく格子戸につかまつて、件の噛み付くやうな赤犬を追ひ乍ら、四方構はぬ聲をあげるのでした。
「靜かにしろ、そいつは皆んな借金取除けの禁呪なんだ、――今日を何時だと思ふ」
野村 胡堂
一
「わツ驚いた、ドブ板が陷穴になつて居るぜ。踏み返したとたんに赤犬が噛み付きさうに吠える仕掛は念入り過ぎやしませんか、親分」
ガラツ八の八五郎は危ふく格子戸につかまつて、件の噛み付くやうな赤犬を追ひ乍ら、四方構はぬ聲をあげるのでした。
「靜かにしろ、そいつは皆んな借金取除けの禁呪なんだ、――今日を何時だと思ふ」