野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分、變な事があるんだが――」
ガラツ八の八五郎が、鼻をヒクヒクさせ乍ら來たのは、後の月が過ぎて、江戸も冬仕度に忙しいある朝のことでした。
「手紙が來たんだらう、恐ろしい金釘流で、――兩國の蟹澤のお銀が死んだのは唯事ぢやねえ。葬ひの濟まぬうち、檢屍を頼む――と斯う書いてある筈だ」
野村 胡堂
一
「親分、變な事があるんだが――」
ガラツ八の八五郎が、鼻をヒクヒクさせ乍ら來たのは、後の月が過ぎて、江戸も冬仕度に忙しいある朝のことでした。
「手紙が來たんだらう、恐ろしい金釘流で、――兩國の蟹澤のお銀が死んだのは唯事ぢやねえ。葬ひの濟まぬうち、檢屍を頼む――と斯う書いてある筈だ」