野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分」

ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗らかな或日の朝のことでした。

「なんだ八、大層あわててゐるぢやないか」

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