野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「わツ、親分」

まだ明けきらぬ路地を、鐵砲玉のやうに飛んで來たガラツ八の八五郎。錢形平次の家の格子戸へ、身體ごと拳骨を叩き付けて、お臍のあたりが破けでもしたやうな、變な聲を出してわめき散らすのです。

「何といふ聲を出すんだ、朝つぱらから。御近所の衆は番毎膽を冷やすぜ」

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