野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「親分、四谷忍町の小松屋といふのを御存じですか」

「聞いたことがあるやうだな――山の手では分限のうちに數へられてゐる地主か何んかだらう」

錢形平次が狹い庭に下りて、道樂の植木の世話を燒いて居ると、低い木戸の上に顎をのつけるやうに、ガラツ八の八五郎が聲を掛けるのでした。

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