野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分、今日は、良い陽氣ですぜ。家の中に引つ込んで、煙草の煙の曲藝をやつてゐるのは勿體ないぢやありませんか」
ガラツ八の八五郎は、入つて來るなり、敷居際に突つ立つて、斯んな事を言ふのです。
「大きなお世話だよ、どうせお前のやうに、空つ尻のくせに、花見に出かけるほどの膽力はないからだよ。――陽氣が良いから、日向に引つくり返つて居ても、トロリと醉ひ心地になるぜ」
野村 胡堂
一
「親分、今日は、良い陽氣ですぜ。家の中に引つ込んで、煙草の煙の曲藝をやつてゐるのは勿體ないぢやありませんか」
ガラツ八の八五郎は、入つて來るなり、敷居際に突つ立つて、斯んな事を言ふのです。
「大きなお世話だよ、どうせお前のやうに、空つ尻のくせに、花見に出かけるほどの膽力はないからだよ。――陽氣が良いから、日向に引つくり返つて居ても、トロリと醉ひ心地になるぜ」