野村 胡堂

銭形平次捕物控

一

「あれを聽いたでせうね、親分」

ガラツ八の八五郎は、この薄寒い日に、鼻の頭に汗を掻いて飛込んで來たのです。

「聽いたよ、新造に達引かしちやよくねえな。二三日前瀧ノ川の紅葉を見に行つて、財布を掏られて、伴の女達にお茶屋の拂ひまでして貰つたといふ話だらう」

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