野村 胡堂
銭形平次捕物控
一
「親分は源氏ですか、それとも平家ですか」
ガラツ八の八五郎は、いきなりそんなことを言ふのです。御用も一段落になつた春のある日、後ろに一立齋廣重がよく描いた、桃色の空を眺めて、一本の煙管をあつちへやつたり、此方へ取つたり、結構な半日を、百にもならぬ無駄話に暮らすのです。
「螢や蟹ぢやあるめえし、源氏だらうと平家だらうと一向構はないぢやないか」
野村 胡堂
一
「親分は源氏ですか、それとも平家ですか」
ガラツ八の八五郎は、いきなりそんなことを言ふのです。御用も一段落になつた春のある日、後ろに一立齋廣重がよく描いた、桃色の空を眺めて、一本の煙管をあつちへやつたり、此方へ取つたり、結構な半日を、百にもならぬ無駄話に暮らすのです。
「螢や蟹ぢやあるめえし、源氏だらうと平家だらうと一向構はないぢやないか」